海兵隊士官学校Quanticoでの体験。

WhartonのLeadership Venture Programの一環で、ワシントンDC近郊のVirginia州Quanticoにある海兵隊基地内のOfficer Candidates School(士官学校、以下OCS)に体験入隊してきた。木曜日20:30から金曜日19:30までのわずか23時間の滞在だったが、Wharton入学前から心待ちにしていたプログラムだっただけに、非常に濃密かつTransformationalな体験ができた。

QuanticoでのLeadership Venture

QuanticoでのLeadership Ventureは2006-7年ごろから始まり、今回で7回目らしい。始まったいきさつは、2006年頃、当時Marine Corps Universityで教鞭を振るわれていたTom Draude准将(93年引退でアメリカでも伝説的なお方)の娘夫妻!?がWharton MBA生だったことから、WhartonのMichael Useem教授(私が最も尊敬するリーダーシップ分野の教授)との間で話がまとまりスタート。このように人伝(ひとづて)にことが進むのがいかにもアメリカらしいところ。

OCSとは?

海兵隊は、大きく分けて兵士(enlisted)と士官(officer)に分けられるが、士官になるためには、学士(大卒)を保有し、そしてOCSを卒業する必要がある。OCSとは、将来の士官になるであろう人材を選抜する学校で、10週間(もしくは6+6週)のプログラムを通し、どちらかというとゼロからの育成というよりも、潜在能力を見抜きスクリーニングに主眼を置いた学校。つまり、能力が足りなければ即アウトなドライで厳しいところ。カリキュラムは、academics 25%、physical fitness 25%、leadership 50%というユニークなバランス。

実際に入学する候補生の前提として、その多くが学業面・運動面が全国トップレベル。それゆえ、OCSのプログラム指揮官が一番注視しているのは、メンタルそして人間的要素とのこと。Marines(海兵隊)のCore ValueがHonor, Courage, Commitmentとしているあたり、そこにいきつくのは納得できる。そして、人間の本質が出るのはどういうときかというと、もっともストレス下にあるとき。精神的に追い込んだ場面をより多く提供する中で、候補生の着飾らない本性を炙り出し、その人間性というものを多角的に評価・点数化していく。

入隊体験時のスケジュール

本来は10週間かけてやるプログラムを掻い摘んで23時間にカスタマイズされていた。スケジュールについては、あえて何が起こるのか教えられていなかったが、大まかに言うと、以下の通り。

日時

イベント

内容

Thu
16:30 Philadelphia出発  20:30Quantico到着
21:30-24:30 軍曹からのかわいがり
Fri
01:00-04:00 仮眠 といっても5分おきに、見張り役が軍曹に大声で報告しなくてはいけないため、ほとんど寝かせてもらえない。実質1-2時間。
05:00-06:00 行進訓練 宿坊から外気がわからない、また何をするかわからないため、大半が超薄着で外に出て寒さとの戦い
06:00-09:00 座学
10:00-11:30 Leadership Reaction Course 4人チームで、障害物が用意されている中、状況やミッションが説明され、一人がリーダー役・残りがフォロアーとなり、どのようにチームを導いていくかを評価される
12:30-14:00 Combat Course
17:00-19:30 Reception
23:30 Philadelphia到着

感想

①軍曹からのかわいがり

到着早々、バスにSergent(軍曹)が乗り込んできて「何も面白いことはない、笑うな。」と挨拶代わりに怒鳴りちらしてきて、到着した興奮でざわめいていた参加者も思わず沈黙。バスを降りて、すばやく整列。遅い人間がいれば全員バスに戻れと言われ、そしてすぐに並べと再び命令。ピーンと張り詰めた緊張の中、身分証明確認など一通り済ませ、Jackson司令官からWelcome Speech。軍曹とはまた対極的に優しい言葉ではあるが、Marinesの役割、またOCSの学校説明、並びにリーダーシップ論を簡潔に説明。今でも記憶に新しいのがMarinesのミッションを説明したときで「世界中の困っている場所に赴き、悪い人を殺す」と説明し、殺すことを正当化してしまうあたり、凄いところに来てしまったんだな、と実感した。

そうこうしているうちにPlatoon(小隊)に別れ、宿坊へ。ここでは、複数の軍曹の指導の下、命令に従うという訓練を3時間ほど受ける。命令があるまで身動きが取れない抑圧的な状況。指導の主目的は、命令を絶え間なく与え続け、わざと混乱を作り、隊員を失敗させ、ここぞとばかりに罵声を浴びせ、ストレス下におくというものと捉えた方が正しいかもしれない。よく戦争映画(フォレストガンプ・プラトーンなど)で、アイアイ・サー”Aye Aye, sir”とか、イエス・サー”Yes, sir”と返事している場面をご存知だと思うが、正にそんな世界。我々が使うのに許される言葉は、命令に対して”Aye Aye, Gunnery Sergent!(わかりました、軍曹)”, “Yes/No, Gunnery Sergent! (はい/いいえ、軍曹)”の2パターンのみ。英語だし早口だし怒鳴っているし、なんと言っているか正直わからなかったのだが、みんなを見よう見まねで何とかついていく。また正面を直視しなくてはならず、軍曹と目を合わせていけないというのも、ここでの慣わし。目を合わせると、反抗の意味になるとか。全力でぶつかってくる軍曹、必死に答える隊員。僕自身も命令を理解できなかったり言われたことがこなせないことがあり、軍曹に2度ほど目の前20cmくらいのところから罵倒された。人権など全くない世界ではあるが、いつしか世の中そういうものだと割り切れる純粋な部分がでてくるのは、自分でも新鮮な感覚だった。

(怒鳴られるときはこんな感じ、ビビるよマジで)

②座学

いわゆるOCSの位置づけの総復習。そして求められるリーダーシップ要素の紹介。更には、実際の士官とのパネルディスカッション。前日もほとんど寝かせてもらえないため、睡魔との戦いであったのは言うまでもなく、しかしその一方でこの機会を最大化したいという欲求が集中力を高めていく。新しい発見だったのは、海兵隊は戦場で70%の情報で判断し続け、その繰り返しの中で最良の結果を求めていくという取り組み姿勢。戦時は時間が制約条件であり、100%の判断材料を集めるのは不可能で、経験や常識、そして五感を使って、すばやい判断を逐一行っていくというものなのだそうだ。戦場は、そもそも意思決定しないと何も悪い状況が変わらないので、動かないことのリスクの方が大きい世界とのこと。そういえば、どこのソースか忘れたが、人は現状維持することを善と思うバイアスがあって、結果として動かないことによって経営者が失敗するケースが実は多いっていう記事をどっかで読んだ。不確実性の中で、いくつかの仮説をおき、シナリオを描き、自分なりに判断を下していかなくてはいけなんだという、非常に実践的なことを学んだ。

③Combat Course

いわゆる実地での訓練。コースは1.5マイルほどあり、ベトナム戦争を経験した士官が設計したコース。設計の目的は、土・泥・水など非常に危険かつ心地悪い環境の中で、士官候補生が兵士をリードする際に、どのようなことが起きるのかというのを再現し理解してもらうこと。前日とは打って変わって親身な軍曹にテクニカルな部分は教えてもらいつつ、我々も約5kgの模倣銃、ヘルメット等を装備し、ロープで崖(3-4mくらい)を乗り越えてみたり、様々な想定環境にチャレンジ。やはり山場は、泥の上を匍匐前進したり、鉄条網の下を注意深くくぐってみたり、泥の中にあるコンクリートパイクを通るところ。実際の士官候補生、また軍曹でも初めは、しり込みするようだ。当然戦場を想定しているので、障害物を乗り越えるとすぐに隊員の安全確保のため、敵陣を想定して銃を構えたり。泥はくさく、ぬかるみの中での足は取られたり、口の中に泥が入ったり。なにより泥水を洋服が吸うので非常に重く動きづらかったが、少しは海兵隊になれたという、上気した気持ちもあったのは事実。

④Reception

訓練とは異なり、それまでお世話になった軍曹もビジネスカジュアルに着替え、和やかな雰囲気。訓練中のお礼にと、我々Wharton側がホストとして、彼らをエスコートし、経験談、人生観などいろいろな話ができた。やはり18歳くらいで入隊し、それ以外の世界を知らない人が多数なので、とても素朴かつ使命感に燃える強いけど優しい男たちというのが率直な印象。彼らは米国だけでなく、世界中に米軍基地があり、世界平和のために多大なる地域貢献をしている。湾岸戦争やアフガンの場に真っ先に向かうのが米軍の中でも海兵隊の役割なのだ。沖縄や横須賀に基地がある日本もその例外ではなく、海兵隊がかつてないくらいに身近に感じると共に、感謝しなくてはならない存在であると改めて認識。

印象に残った、先にも登場したTom Draude准将のスピーチを掻い摘んでメモ。

リーダーに必要な3原則とは、

(1) know your job

Marinesはとにかく、ミッションがあれば、シンプルに”Get things done”なのだそうだ。自分のやるべきことを理解するとと共に、自分らしくあれ。自分のないリーダーは信念がぶれ、信頼されない。自分のスタイルを見つけていけばよい。

(2) be a man or a women

Moral(道徳観)とEthics(倫理観)の2点について。Moralは善悪の判断なので難しくないが、Ethicsは善と善の間での判断で人により結論が異なる。人間性が出るところなので、いろいろ経験し、人と関わり、本から先人の教えを学び、自分に素直に、一貫性をもってほしい。

(3) care about your troops

海兵隊とはまさに、命をかけた仕事。それゆえリーダーの判断が、隊員の命、家族の幸せをも左右する。だからこそ仲間を大切にしろ、ということ。空き時間で軍曹といろいろな話をしたが、軍隊では、上司部下の関係ではなくともすれば親父・息子というような関係なのだそうだ。そんな関係だから、死ぬ覚悟で仕事もできるということらしい。海兵隊のメンタリティが自然と腹に落ちた瞬間。

Takeaway

今回のQuanticoでの経験は、目から鱗だったのは言うまでもないが、中でも一番の学びは、先にも記した士官と兵士のリアルな人間関係に加え、士官のDirective(指導的)なリーダーシップスタイルについて。僕自身の身近なWhartonやビジネスの世界というのは、ある程度フラットもしくはボトムアップな関係の中で合意形成し、全員で作り上げ、物事を進めていくのに対し、軍隊は、より階層的な関係の中で、情報がある程度集まったらトップが判断し、トップダウンで部下が従うというもの。部下が従うに当たっては、信頼関係がないと当然実現されないし、計画も効果的に遂行できない。使い分けの場面は当然あると思うが、時に不確実性を前にし、かつ緊急性が求められる場面では、自ずと目指すべき方向がわかった気がした。

広告

さかちん について

のらりくらり、やんわり、結果オーライな人生
カテゴリー: leadership, Wharton パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中